その他契約の基礎知識

その他解約の基礎知識

  1. その他解約とは?
  2. 契約の無効
  3. 契約の取消し
  4. 消費者契約法による解約
  5. 民法による解約
  6. 当事務所より

1.その他解約とは?

契約解除するというのは、何もクーリングオフや中途解約だけではありません。

これら以外に「消費者契約法による契約の取消し」「民法による契約の無効、または取消し」「合意による契約の解除」等があります。

詳細な内容については、当ページの「4.消費契約法による解約」「5.民法による解約」「6.合意による解約」でご説明しますが、まずは「クーリングオフの期間が経過したから解約できないということはない」ということを知ってください。

解約したいけど自分では判断ができない、というような場合には当事務所にご相談ください。

2.契約の無効

契約の無効とは、字のとおり「効果のない契約」ということです。
つまり、「最初から契約がない」ということになります。

契約の無効が認められると、その効果として以下のようになります。

・商品の売買契約の場合
事業者:既に受け取っている金銭の返金
消費者:既に受け取っている商品の返品
・商品を消耗するような契約の場合
事業者:消耗された商品分の代金のみ受領、残りの部分は返金
消費者:消耗した商品分の代金を支払い、商品の残存部分を返品
・サービスの提供を受ける契約の場合
事業者:サービスの提供部分の代金のみ受領、提供していない部分は返金
消費者:サービスを受けた部分の代金を支払い、以降のサービスは受けない

ただし、契約の無効は無条件で認められるわけではなく、民法等の法律により認められる要件が定められています。

3.契約の取消し

契約の取消しを行うと、それまで有効に結ばれていた契約は初めからなかったことになります。

その効果として、事業者、消費者の双方が現在の状態から初めの状態(契約がなかった状態)に戻さなければいけません。

契約がなかった状態となりますので、結果的に無効と同じ処理を行います。

・商品の売買契約の場合
事業者:既に受け取っている金銭の返金
消費者:既に受け取っている商品の返品
・商品を消耗するような契約の場合
事業者:消耗された商品分の代金のみ受領、残りの部分は返金
消費者:消耗した商品分の代金を支払い、商品の残存部分を返品
・サービスの提供を受ける契約の場合
事業者:サービスの提供部分の代金のみ受領、提供していない部分は返金
消費者:サービスを受けた部分の代金を支払い、以降のサービスは受けない

この説明だけでは分かりにくいと思いますので、一つ例を挙げてみます。

事業者Aが絵画を50万円で消費者Zに販売する契約が結ばれ、絵画は消費者Zの手元に渡され、代金として既に30万円を支払っているとします。

消費者Zがこの契約を無効であると主張し認められると…

事業者A → 受け取っている代金30万円を消費者Zに返金
消費者Z → 絵画を事業者Aに返品

ただし、契約の取消しは無条件で認められるわけではなく、民法や消費者契約法等の法律により認められる要件が定められています。

4.消費者契約法による解約

消費者契約法では、事業者と消費者の間で取り交わされた契約について、以下のいずれかに該当する場合に、契約の取消しを認めています。

a.契約の際、重要な事項について事実と違うことを伝えたとき(不実告知)
→ 例えば事故車なのに無事故であると伝えていた場合、築10年の家なのに築3年の家であると伝えていた場合など。
b.将来、どうなるか分からない不確定事項について、必ずこうなると断定的なことを伝えたとき(断定的判断)
→ 例えば外貨預金で必ず円高になると言われた場合、この会社の株式は必ず値上がりすると言われたような場合など。
c.事業者が不利益である重要な事実を知りながら、利益があることしか伝えなかったとき(不利益事実の不告知)
→ 例えば家を購入する際、事業者は隣に高層マンションが建つことを知りながらそのことを伝えなかった場合など。
d.事業者が消費者のもとに訪問してきたときに、帰って欲しい旨を伝えても帰らなかったとき(不退去)
→ 訪問販売員が訪れてきて「いらない」「帰ってくれ」と伝えたり、「時間がない」「今から出かける」等帰って欲しい旨のことを伝えたのに帰らなかった場合など。
e.事業者の営業所や販売会場等に行ったときに、帰りたい旨を伝えても返してくれなかったとき(監禁)
→ 事業者に招かれて新商品の発表会に参加したところ、販売会が始まり帰ろうとしたら出口をふさがれたり、事業所で「用があるから」と伝えたのに長時間返してくれなかった場合など。

ただし、契約の取消しはいつまでもできるというわけではなく、「契約を追認できるときから6ヶ月、契約をしたときから5年」で消滅時効となって、消費者契約法での契約の取消しができなくなります。

もっと分かりやすく書くと、次のようになります。

・不実告知、断定的判断、不利益事実の不告知の場合
→ 消費者がそのことに気がついたときから6ヶ月、または契約の時から5年のいずれか早いとき

・不退去、監禁の場合
→ 事業者が帰ったとき、監禁から解放されたときから6ヶ月、または契約の時から5年のいずれか早いとき

これらに該当する可能性があるようなときや、自分で判断ができないような場合は当事務所にご相談ください。

5.民法による解約

民法では、以下の場合に契約の取消しや無効を認めています。

a.消費者が未成年の場合(契約の取消し)
→ 未成年者が契約のような法律行為を行う場合、原則として親権者の同意が必要なので、親権者の同意を得ていない場合
※未成年でも婚姻をしている場合、契約時に成人であると事業者を騙して契約した場合等、取り消せない場合もあります。
b.消費者に契約の内容の重要な部分について錯誤(勘違い)があった場合(契約の無効)
→ 例えば会員になったら格安で海外旅行に行き放題と思って契約したのに、実際は英会話の教材の契約だったような場合
c.事業者に騙されて契約をした場合(詐欺:契約の取消し)
→ 例えば1つ1万円の価値しかない宝石を、100万円の価値があると騙されて契約してしまったような場合
※ただし「事業者が消費者を騙して契約させようとした」という事実を、消費者が証明する必要があります。
d.事業者に脅されて契約をした場合(強迫:契約の取消し)
→ 訪問販売員が訪れてきて、「契約しなければ家族がどうなっても知らない」などと脅され、恐怖のために契約させられてしまったような場合
※ただし「事業者が消費者を脅して契約させようとした」という事実を、消費者が証明する必要があります。
e.公の秩序や善良な風俗に反するような契約の場合(公序良俗違反:契約の無効)
→ 暴利的契約やねずみ講のような場合

民法による契約の無効や取消しは、認められる要件が厳しく判断が難しい場合が多くあります。

ご自身で判断できないような場合は、まず当事務所にご相談ください。

6.当事務所より

ここまで見てきたとおり、契約の解約方法は何もクーリングオフだけが全てではありません。

ただし、消費者契約法や民法に基づく方法には、法律的な知識や判断、事業所との交渉能力が必要になり、一筋縄に解約することは難しいのが現状です。

そのような場合は、お一人で立ち向かうのではなく、どうか我々専門家を有効に活用して、より良い結果を勝ち取ってください。